2010年8月3日火曜日

第03回 「"富"は誰のもの?」

Lecture 1

「リバタリアニズム」

 ■リバタリアニズムの身近な例

  「干渉主義的な立法の否定」
  シートベルトをしないからといって、他人に迷惑がかからない。
  俺の自由だ。なのになぜ取り締まる。

  「道徳的な立法の否定」
  東京都のマンガ条例イミフ。
  マンガを規制しておいて石原慎太郎の障子ポコチンはOKて。
  なにが世間一般のモラル・価値観とするかの線引きが横暴じゃないか!?

  「"金持ちから貧困層への"富の再分配の否定」
  俺の金は俺のもの。なぜ税金を取る。


 ■ノージックによる課税への反論

  課税 = [所得] の取り上げ
     = [所得にかかる労働の結果] の取り上げ
     = 納税先のための[無償労働]
     = 納税先からの[被奴隷]状態

     = 人は[奴隷]でない。
       「自分を所有しているのは自分である」
       ということの侵害

  この、「自分を所有しているのは自分である」という考え方が
  リバタリアニズムの基本的なところにある。


***


Lecture 2

課税の正当性

 ■税金には2種類ある

  ・富の再分配でない税金

   町内会費のように、防犯灯の電気代などに使われるもの。
   同じように、国民全員がなんらかの形で恩恵をうけている、
   警察・消防・調停システムである司法や公正な市場制度を
   維持するのに必要なコスト。
   →いわば必要経費なのでナットク。問題ない。

  ・富の再分配である税金

   ビル・ゲイツからたんまり取って、貧困層の生活を
   支援するのに使われるお金。
   →ナットクできない。個人の財産権を侵害している。
    強制的に取られてしまうあたりリバタリアニズム的に
    大問題。


 ■リバタリアニズムへの反論

  ・統治されるものの同意による課税は、強制ではない。

   いやなら税のない国(?)へ出てゆけばいい。
   それも厭なら税金廃止をかかげて国政の場へ立候補すればよい。
   そして好きなように変えればいい。
   民主主義にのっとって。

   しかし大多数は税の廃止を歓迎しないはず。
   なぜならアメリカの富は人口と比べて
   絶望的なまでにバランスを失っているから。


  ・そもそも、「自分を所有しているのは自分である」
   という論拠自体が正しいか

   ここでコケたら話にならないよ?


 ■「自己が所有する自己:自己所有」と私有財産

  この「自己が所有する自己」の考え方はノージックのもの。
  そしてさらに、ノージックはジョン・ロックからアイディアを
  借りてこの考え方をかたちにした。

  自己の労働力を所有しているのが自分であるからこそ、
  「労働力の対価=所得」も自分のもの、と考えることができる。
  という考えをつくったのがジョン・ロック。

  ならばまず、ジョン・ロックの主張を吟味する必要がある。