2017年4月15日土曜日

メディカルKit Rを考える。

メディカルキットRという保険商品がある。

東京海上日動あんしん生命 メディカルKit R
http://www.tmn-anshin.co.jp/kojin/goods_medical/kit_r/

頼んでもないのに代理店からセールスの電話がかかってくる。
ウリは

「60or70歳時点でかけた分(から受け取った保険金総額
を引いた分)かえってきます」

という点。
是非検討をというので義理堅い私はこれを検討してみる。

まず大前提として、かけた分だけ返ってくるというのは

ただの貯金とかわらない

ということになる。利息はつかない。
まあ、普通預金も利息ないようなもんだが。
電話セールスのおねえちゃんは

「貯金しながら実質タダで保険に入るようなもの」

という台詞がロープレからそう仕込まれているのだろう。
で、実際のところ自分でかけて自分で受け取るならばそれは
文字通り自前で積み立てるのとかわらない。

ここでウリ文句をもう一度。

「60or70歳時点でかけた分(から受け取った保険金総額
を引いた分)かえってきます」

もらえるはずだったのは自分で積み立てた(ようなものである)お金。
もらえなくなった分もまた、自分で積みたてた(ようなものである)お金。

自分のお金で自分の入院費をまかなったならば、それは
保険屋さんは要った話ではない。
保険屋との勝ち負けで言うならばじゃあ、何日入院したら
実質的な保険金がもらえるのか。

具体的に計算。
たとえば60歳時点でキリよく100万円受け取る見込みとしよう。

日額5000円×200日=100万円
(手術費用は5万円と医療保険としては手薄なのでないものと考える)

なので、60歳までに200日以上入院してはじめて
保険に入っててよかったねという話になる。
むしろ、この場合お金が帰ってこないくらいが得である。

でだ。

それって掛け捨て(掛け捨て部分を含む「積立型」もそうだけど)の
従来型の保険でも同じことが言える。

たとえばこの保険の場合上記に合わせて考えると
37歳男性が60歳までかけるとすると月約3800円で払込総額約100万円。
入院200日までは保険に入っている意味はない。
ただし入院しなければマイナスもない。

で、カカクコムで検索するとアクサダイレクトで同条件で
月約1200円で日額5000円支払いの終身保険がある。
ふつーの保険なので、入院しなければその分マイナスになる。
入院日額5000円ということは、約4ヶ月につき入院1日ペースで
「入院しなかった分の損」が発生する。

上記にあわせて計算。
37歳の誕生月に加入してちょうど22年間払った60歳ちょうど時点では

払込保険料総額31.6万円÷日額5000円≒63日

となる。言うなればのべ約二ヶ月内の入院なら保険なんか入らないでも
全然よかったよねという話。

ここでいったん60歳時点のおさらい
※一入院上限60日なので「のべ」で考える

・メディカルキットRに入った場合
入院0日の場合→マイナス0円
入院1月の場合→全額自費持ち出し(マイナス15万円)
入院2月の場合→全額自費持ち出し(マイナス30万円)
入院3月の場合→全額自費持ち出し(マイナス45万円)

入院半年の場合→全額自費持ち出し(マイナス90万円)

・アクサダイレクトの場合
入院0日の場合→マイナス30万円
入院1月の場合→全額自費持ち出し相当(払込30万-受取保険金15万円→マイナス15万)
入院2月の場合→自費持ち出しゼロ(払込30万-受取保険金30万円→プラマイ0)
※めんどくさいので四捨五入して払込保険料30万とする

ひと月入院(それでもけっこうなものだが)でふつーの
保険商品と同じ結果である。
また、一日5000円分の自費負担がふた月を境に
完全になくなるアクサの方が割がいい。(長期入院するとして)

そもそも保険というのは保険会社が損することになってない計算だが
加入者からするとリスクヘッジ手段として必要なコストをかけるもの
として存在する。
言い換えれば、そもそも保険って自費持ち出しを軽減するために入るもの。
お金を出してリスクを本人から保険会社へ肩代わりしてもらうこと。

考えにもよるだろうけど、入院一月でトントンなら
全然御の字と考える人もいることでしょう。

このことから、メディカルキットRは

「保険」に入っているが、実は「保険」に入ってないようなもの

という見方ができる。というかそうとしか言えない。
どんなに入院しても保険会社は身銭を切ってくれないのだ。
(もし「どんなに」という表現に違和感を持つのなら、働き世代の何%が
いったい200日もの長期間入院するか、比較してほしい)

ヘッジコストがこのように「実質ゼロ」ならば「ヘッジなし」である。
一方、ヘッジコストに見合った保障なら入ってもいいし
コストが高すぎるならそれは入らないほうがいい。

日本人が普通保険というものを考えるとき、食べ放題のように
「もとを取るか取らないか」
という点を重点に置くと思う。

このメディカルキットRは、のべ200日以上の大病でもしない限り、

自費持ち出しが保険金という名前・お金の流れになるだけ

の商品である。
70歳受取とかいった日にはもう目も当てられない。

保険契約を結んではいるものの、実際のところ

保険屋さんに無利息で金を貸してるだけ

のもんでしかない。
あえて言うならば

インフレや保険会社破綻時のリスクや入院するような病気でなく
ポックリいくとか事故でポックリいくとか特約の還付を受け取れない
まま契約が終了するリスクを飲み込むかわりに約30万円(37歳加入、
60歳まで入院なし、アクサの場合)のコストをチャラにすることに
メリットがある商品である。
※年末調整の保険料控除は計算に入ってない

昭和生まれの私の考えるような商品ではない。
サイトには

「2013年日経優秀製品・サービス賞 優秀賞を受賞しました。」

とあるが、この時点でこの日経優秀ナントカ賞というやつが
残念賞であることがわかる。
この賞がすすめるものは絶対に信用しないことにした。