デジカメには赤外線フィルタが入っている。
これは画質の低下を避けるためとある。
一方でコンデジやスマホにIRフィルタが入ってないという話があるが
センサーサイズの差を加味すれば画質に極端な差があるとは思えない。
この赤外線というのは本当にそこまで悪者なのか確認しにいく。
■手持ちのSL1000で赤外線は写るのか
デジカメには通常ローパスフィルタにIRカットフィルタが組み込まれており、
赤外線の影響は受けないはずである。
ここでよくある実験。
目に見えない光の類の光学マウスやらリモコンやらを撮ってみる。
IR丸見えやんけ・・・スマホ並じゃないの・・・。
どうやらこいつにはまともなのが入ってない様子。
ちなみにEOS Kiss X3は無問題だった。
■材料を探しに行く
「cmos 量子効率」で画像検索すると近赤外線領域でセンサーがこんもり
しているグラフがちらほらある。
モノは違えど、もしこれに近い特性であるならば、このセンサーは
そら紛れもなく近赤外線領域を拾ってしまってることになる。
■お買い物
・IRカットフィルタ
探してみたがまず国内にモノがない。
あっても1万円越えとかいうわけのわからん価格設定。
仕方ないので中華サイトからお取り寄せ。
どうもIRカットフィルタというものはメジャーでなく、UV/IRカットという
バンドパス的な物が一般的な様子。
お値段900円ほど。メイドインチャイナなので品質も効果もわからん。
でもこれしかモノがないわけで。
スペック表記がないのでなんぼのもんかは不明。
・IRフィルタ
上記とは真逆の、可視光をカットしてIRのみを透過するフィルタも買ってみる。
お値段1000円ほど。
IRフィルタにはIR72(IR720)・IR76(IR760)・IR85(IR850)などがあるが
wikipediaを見ると赤外線は750nm以上を指すようなのでこれに近いIR760をチョイス。
モノが52mm径なのでステップダウンリングも取り寄せる。
・SL1000用フィルタアダプタ
所詮コンデジなのでねじ切りがない。
これに無理くり58mm用フィルタをつけるため、ネジ部を両面テープでくっつける
アクロバティックなアダプタを装着する。
国内でセット品を仕入れるとぼったくり価格になるので
こいつも中華サイトから取り寄せる。
お値段500円ほど。
これはS9400W・S9800・S9900、オリのSP-100EEにも利用可。
ていうかSP-100EEもろレンズいっしょで外注バレバレ。
そりゃレンズ品質に不満あるわなあというレビューも。
価格.com - 『画質は安物コンデジ以下』 オリンパス OLYMPUS STYLUS SP-100EE
*れたす*さんのレビュー評価・評判
http://review.kakaku.com/review/K0000622935/ReviewCD=829030/#tab
■検証の流れ
1.通常の撮影条件で赤外線は写り込むのか
自然光 - 可視光 = 赤外線 になるはずなので、同じ条件で
IRフィルタを通した写真が真っ黒でなければその分影響があるといえる。
ここで真っ黒だったらその時点で企画倒れ。
2.赤外線を除去したら画質は目に見えて向上するのか
自然光 - 赤外線 = 可視光 になるはずなので、同じ条件で
二枚撮り比べてみて、900円出してIRカットフィルタを買う価値が
あるのかどうかを確かめてみる。
■可視光をカットしてみる ~準備編~
初IRフィルタに四苦八苦。
また、週間天気も芳しくなくおひさまマークが向こう一週間は来ない。
冬にやる企画じゃねえなそもそもという後悔の念を抱くもはじめちゃったものは
仕方ないというかモノも買っちゃったのでこの自由研究は何かしらの形で
仕上げなくちゃならない。
なにはともあれまずは撮ってみる。
露光の参考にあえてレンズフードでケラレるように仕向ける。
WBオート ISO3200 1/20sec F2.9 24mm(35mm換算) 曇り
R
G
B
まず言えることは、SL1000では赤外線には本来波長の短い光に反応する
青色センサーと波長の長い赤色センサーとが強く反応している。
その一方緑色センサーは不得手(本来はそうあるべきなんだが)なようで
かなり暗くがさがさ。
また、赤色と青色チャンネルが露出オーバー気味。
少しでも暗くするとAFが効かなくなるので、おそらくAF・AEは
緑チャンネルだけを見て決定されている。
■赤外線をカットしてみる ~準備編~
次にIRカットフィルタを試してみる。
フィルタなし 1/200sec F2.9
フィルタあり 1/170sec F2.9
全体的に青みがかった色になる。
特に周辺が強く出る一方中央付近はやや収まった感じ。
また、条件にもよるがAEでちょい暗くなる。
アベレージ測光だとまあそりゃそうだろうなという気がしないでもない。
この時点でおやおやという感じだが幸い中央部分だけはどうにか元の色に近い。
が、それでもやはり青い。あーあ。
斜めから差す光はてきめんにフィルタとレンズの間で青くさわがしくなるはずなので
レンズフードはだいぶ深いものが必須だろう。
ちなみにマウスを撮ったら青い光は消えたので一応効果はきちんとある様子。
■可視光をカットしてみる
一瞬の晴れ間でフリンジ出るようにしてどうにか撮れた一枚。
ズームすると途端にAFが効かなくなるのでピントをあわせたあとにフィルタを
かける要領で撮影。
IRフィルタなし 1/60 F6.5 ISO100
IRフィルタあり 1/60 F6.5 ISO100
(参考)上記IRフィルタあり +3EV
はい、何も写ってないと。さーこの結果どうしてくれよう。
仮に赤外線が影響するならば、人間の目は可視領域上限まで元気よく
100%の感度で感知できるわけでもないんでしてせいぜい650nm以上の領域が
もーいい加減見えんよって具合の一方機械はそんなのお構いなしにバリバリ
検知するのかもしれん。
ならば「はい、もう完っっ璧に可視光越えてます!」というIR760はカット効果が
強過ぎで比較に用いるべきでなかったかも。
かといってこれ以上使いみちのないフィルタ買い足してもなあとここでいったん見切り。
まあ、実際問題なにも写っちゃいない以上どうでもいいんだけど。
参考
第3回 可視域とは?|CCS:シーシーエス株式会社
https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol03.html
■赤外線をカットしてみる
ここから本題。
赤外線を多分に含むお日さまの光の下でオーバー目にとってみる。
ここでフリンジやハイライトを押さえ込めたりできたら御の字。
画像は製品付属のRAW現像ソフトでパラメータいじらずそのまま出したもの。
いずれもWBオート。
IRカットフィルタなし 1/105sec ISO100 F6.5 1200mm相当
IRカットフィルタあり 1/105sec ISO100 F6.5 1200mm相当
はい、色が変わっただけでした。ちゃんちゃん。
ついでに色変わっちゃいますシリーズいろいろ。
赤色がテキメンにやせる。
可視光を残すというよりもすでに可視光に影響が出ちゃってる。
どっちがフィルタありかは書くまでもない。
■まとめ
赤外線は写りに影響しない。
するかもしれないが、直射日光を受けたハイライト部でさえなーんも違いがない。
そしてIRカットフィルタはひどく青みが強く使い物にならない。
よって、IRカットフィルタはまー要らない。おすすめしない。
買っても何も得しないし、実際もうこれ使い所がわからない。
「味のある」画を撮るにしても赤色が飛ぶんで人をとるには向いてない。
なにかこう、無機質なものを撮るとか夕方に持ち出すような運用になるんだろう。
しかしホワイトバランス調整してどうにかなるんかなこれ…。